ポーランドの民族舞踊  


 
ポー研・彩 2/25

 ポーランドの民族舞踊は、ヨーロッパ舞踊との交流の歴史と近隣諸国との交流の関係から非常に 多様であります。 また、ポーランドの民族舞踊と民俗音楽は互いに密接な関係にあり、その特徴は リズムを変化させるテンポ・ルバトにあります。
 16世紀には、ドイツ、スウェーデン、ハンガリー、イギリスおよびオランダなどで収集された 音楽の中に、ポーランド・スタイルを真似た踊りを多く見出すことが出来ます。17世紀において、 ポーランドの弱体化に乗じて領土内に進入したスウェーデン軍はポーランドの踊りを本国に持ち帰り ました。今でも、ポルスカなどにスウェーデンの民族舞踊の中にこれらの名残があります。
 18世紀には、ポーランド国家の衰退、滅亡があったにもかかわらず、当時のヨーロッパの舞踏会 において、ポロネーズが必ず踊られていたように、ポーランド舞踊は広くヨーロッパで流行していました。 19世紀になると、マズルカやポルカ・マズルカなど、ヨーロッパ全土にポーランド舞踊の再来が 起こりました。
 ポーランドの民族舞踊には、ポーランドの舞踊を代表するナショナル・ダンスと、 各地域で踊られているレイジョナル・ダンス(フォーク・ダンス)があります。



1.ナショナル・ダンス

  (1).ポロネーズ
  (2).マズール
  (3).クヤヴィアク
  (4).オベレック
  (5).クラコヴィアク


2.レイジョナル・ダンス(フォーク・ダンス)

  (1).ポモジェ地方
  (2).ヴィエルコポルスカ地方
  (3).シロンスク地方
  (4).マウォポルスカ地方
  (5).マゾフシェ地方
  (6).マズリィ地方
  (7).全国的に踊られている踊り




〔1〕.ナショナル・ダンス

 ポーランドの舞踊文化は他の国と同じく、2つの流れに沿って発展してきました。
   @.農民や一般民衆の本格的な舞踊文化
   A.貴族や都会人たちの中産階級の踊り
  この2つの流れは、様々な状況のもとで互いに影響を及ぼし合ってきました。 それゆえに、農民舞踊のあるものは封建貴族によって受け入れられてきました。 そして、明らかに上流階級の社交集団に合うように変えられて浸透し、 ポーランドの国内で踊られるようになりました。
  首都での国王選挙や会食の他、時あるごとに接触をしていた貴族諸侯は 常にこれらの踊りに接する機会がありました。 それゆえ、上流階級へと受け入れられた農民起源の踊りが、諸候領や王宮にさえ入って行きました。 これがナショナル・ダンスと呼ばれている踊りであります。
 19世紀の終わりから20世紀の初めにかけて、ポーランド中のほとんどの社交界で踊られる ようになりました。この原因の1つに、18世紀の末に貴族諸侯が催したフォーク・スタイルの 謝肉祭の流行がありました。これらの踊りはそのまま19世紀初頭のローマン主義の流行の中に 融合していきました。そして、専門的な舞踊家によって、ナショナル・ダンスは変形され、装飾され、 ついにはワルシャワのオペラにまで登場するに至りました。
 20世紀初頭、これらのナショナル・ダンスはリクリェーションと国民意識を高めるためとの両面 から、ポーランドの学校で取り上げられました。この結果、新しい役割を担ったナショナル・ダンス は新しい形式へと発展しました。


(1).ポロネーズ

  ポロネーズは、ポーランドのナショナル・ダンスの中で最も古い起源を持つものであり、 ある意味では民衆起源でない唯一の踊りと言えます。これはポーランドの民衆の踊りとして発生した 婚礼の儀式や、式典の様々な節目に、くねくね曲がって行進する行列に適応させた、 一般には3拍子のホゾニイという古い踊りが基本になったものと言われています。  1574年にはポーランドの首都クラコフでヘンリック・バレツィ王の即位式典で貴族諸候の行列 に使われたという記録もあります。


(2).マズール

  マズールは16世紀にポーランドの首都、ワルシャワも周辺のマゾフシェ地方で発生した 3/4拍子のカップルの踊りであり、その特徴はアクセントの移動にあります。
 通常は第2拍、あるいは第3拍にアクセントがあり、この強いアクセントによって精力的な力強いものと なっております。このような性格は踊りのステップにも現れており、気品高くエレルギッシュであるが、 床から余り離れず、滑るように踊られます。
 ポーランドの人々はこの踊りをマズールと呼ぶのに対し、ヨーロッパの各地ではマズルカの名で 親しまれています。元来は8人、あるいは16人程度で踊る農民スタイルの踊りでありましたが、 上流階級に取り上げられると舞踊家達の手によって、ステップは整理され、装飾され、以前は先頭の リーダーによって組み立てられていたフィギュアを固定化されてしまいました。そして、19世紀には 簡単な宮廷舞踊となってヨーロッパ中に広がりました。


(3).クヤヴィアク

  クヤヴィアクはクヤヴィ地方のビドゴシュチ周辺に起こった踊りで、全ポーランドの宮廷舞踊として 普及し、踊られました。
 基本的リズムは3/4拍子で、滑らかなウォークで踊られます。音楽は普通、もの静かで、 単調なものであり、感傷的ではあるが、スローである必要は必要はありません。しかし、クヤヴィ地方の古い 伝統的な踊りは、始めから終わりまでゆっくりしたテンポで踊られました。
 クヤヴィアクは、民衆の様式を最も豊富に持った舞踊に発展しましたが、一方、メロディーもショパンに よって素晴らしい芸術音楽に高められました。 まさに舞踊における叙情詩の傑作と言えるでしょう。
クヤヴィアクはときとして結びの部分で、非常に速いオベレックに移り変わっていくことがあります。


(4).オベレック

  オベレックは元来、フォークダンスとして存在していたのではなく、マズールの近代的な ヴァリエーションから生まれた最も新しい踊りです。
 そして、マズールと同様にマゾフシェ地方を起源としており、18世紀から他の地域に広がり、 19世紀終わりには全ポーランドに普及しました。
 オベレックの名の起こりはオブラチャチ・シェン(ぐるぐる回る)であると言われています。 従って、その特徴的動作は何と言っても回転動作であります。 リズムは速く、力強い3/8拍子、または3/4拍子であり、古い踊りではショルダー・ウエスト・ポジション で踊られましたが、最近はクローズド・ポジションで踊られるようになっています。
 マゾフシェやクラクフで踊られているオベレックは非常に速く踊られます。一方、ポドラシュ地方では最も ゆっくり踊られます。オベレックは他のナショナル・ダンスと共に民衆の中で最も人気のある踊りの一つに なっています。


(5).クラコヴィアク

  クラコヴィアクは、古い民衆の踊りを吸収し、古くから独立した踊りとして、あるいは婚礼の儀式の 一部として行われていました。
 ポロネーズに劣らず古い起源を持つ快活な踊りであります。そして、この踊りも貴族諸侯に受け入れられて 洗練された華麗な装飾的動作へと変化して行きました。
 クラコヴィアクの名は、1596年までポーランドの首都として栄えていた古都クラフに起源しています。 また、クラクフは昔、沼地だったヴィストゥラのヴァヴェルの丘に最初の町を作った伝説のクラクにより 名付けられています。
 1510年にはシギスムント王の下でクラコヴィアクを踊ったという記録があるが、ポロネーズほどには 上流階級で踊られることはありませんでした。1794年頃にワルシャワ・ナショナル・シアターで踊られた 記録もあり、その後、19世紀には度々舞台で上演されて有名になりました。






〔2〕.レイジョナル・ダンス(フォークダンス)

  ポーランドの農村文化は、近年まで変化の少ない国の一つでした。村落生活は確立されており、 ほんのわずかづつしか変化しませんでした。農村社会は十分に統合され、ヨーロッパの他の地域では ずっと昔に失われてしまった古い伝統を現在に至るまで保持してきました。
  この様な状況の下で、踊りはポーランドの村々では良く踊られており、また、村人は踊りを踊る 機会を何とか作り出そうとしました。  それは、四旬節や降誕節の特別の断食の日を除いて数限りない機会があり、踊りは昔から村人達に とって娯楽の中心でした。 しかし、これらの踊りは、都会の社交界が理解したものと異なったもの でした。昔の村落社会において、踊りは集団生活上の社交場として重要な役割を果していました。  そして、そこで踊られる踊りは、装飾もなければ、舞台で踊られることはありませんでした。





〔3〕.ポーランドの踊りの特徴

  ポーランドの踊りの第一の特徴は、多くの踊りが創作自由であるということです。
  踊りの多くの動作は習慣的に用いられるいくつかの基本的動作をもとに即興されます。 従って、私達はポーランドの踊りの中に数限りないヴァリエーションを見出すことができます。 ときには一つの村でさえ、また踊る時間によってさえ、踊りが様々にその姿を変えて行きます。
  ポーランドの踊りの第2の特徴は、多くの踊りが男女カップル・ダンスであり、男子と女子は 踊りの中でそれなりに重要な役割を果しております。
  男子は常に女子に意を注ぎ、その意識の高揚を示していなければなりません。また、女子は男子 のこの働きかけに応じるだけの配慮が必要であり、これが踊りを大きく左右するものであります。
  ポーランドの踊りの第3の特徴は、踊りの軽快さと流動性をあげることができるでしょう。 特にナショナル・ダンスにおいては、その洗練された美しさ、創造された技巧的動作こそポーランド 人の誇りであり、心であると言えるでしょう。このような意味でポーランドの踊りを踊る際には、 気品高く、華麗に踊ることが必要であります。


 
※1 詳細につきましては、川上雄也著 ポーランドの民族舞踊(T)、(U)、(V・新刊) をご参照下さい。
※2 踊りの音楽も、CD(4枚組)でご提供できます。
※3 購入ご希望の方は、川上雄也宛 (電話&Fax: 048-978-0622) ご連絡下さい。