ホダ木作りの極意
 農業の金言に「下農は草を作り、中農は米を作り、上農は土を作る」という言葉があります。(これにはさらに、「特上農は人を作る」と続きます。)

これは大変な名言で、農業だけでなく一般論として、十分通用すると思いますが、これをシイタケに当てはめると、「下農は害菌を作り、中農はシイタケを作り、上農はホダ木を作る」となるでしょうか。

 それくらい、シイタケ農家にとって「ホダ木作り」は重要なことです。

 シイタケ菌は死物寄生菌といって、枯れた木に住み着きます。従って、枯れた原木に菌を植えて栽培すれば良いのかな、というとそうではありません。

 なぜなら、木が枯れると、この状態はシイタケにとって砂漠のような状態で、菌が成長するには過酷な状況です。また、枯れた瞬間からいろいろな雑菌の繁殖が始まるので、後でシイタケ菌を植え付けても、シイタケ菌が蔓延する余地がなくなっています。枯れた木に菌を植え付けても、普通シイタケ菌は死んでしまうのです。

 私たちシイタケ農家は、生きている木を90cmに切った物を購入します。生きている木ですから、原木の中に害菌はいません。

その代わり、原木が生きているので、植え付けたシイタケ菌を原木全体に蔓延させるのも大変です。なぜなら、シイタケ菌は枯れた木にしか蔓延できないからです。

つまり、シイタケ農家は死物寄生菌であるシイタケを、わざわざ枯れていない生きている原木に植え付けて、育成するという、摩訶不思議な方法をやっているのです。

シイタケ菌を原木に植え付けます。このとき原木は生きているので、原木を枯らさなければなりません。そのためには、原木に水を与えなければよいのですが、全く与えないとシイタケ菌が弱ってしまいます。いずれ死んでしまいます。

反対に水を与えすぎると、シイタケ菌は元気のなるのですが、原木も元気になってしまいます。つまり枯れません。

もちろんシイタケ菌にだけ水を与え、原木にはやらない、ということが出きれば良いのですが、そんなうまいことはできません。

ということは、シイタケ菌が元気になるくらいの水の量で、なおかつ原木には足りない水の量を与える。こんな、微妙な水分管理が必要になってきます。 

植物の「挿し木」の管理をするような状況なかで、原木の方には「芽」や「根」を出させず水分を抜いて枯らしてゆき、シイタケ菌の方だけ成長させる、ということをするわけです。

このとき注意しなければならないのは、原木が枯れるときは、外側の樹皮や木口の部分から枯れていく。つまり、原木の周りの部分ほどシイタケ菌が蔓延しやすく、中心部ほど蔓延しにくいと言うことです。

水分管理がうまくいかず、中心部にシイタケ菌が蔓延しなかったホダ木、これが「芯」となって残るのです。

「芯」が残っているホダ木は困りものです。

「芯」が残っていると、ホダ木からシイタケの生える量が減ってしまいます。

また、小さなキノコしか生えてこなくなります。

収入が減って、シイタケ農家にとっては一大事です。

「芯」のないホダ木を作ること、これがシイタケ農家の目標なのです。